曲り家
遠野地方の古民家は「南部曲り家」と呼ばれるものがほとんどで、
現在では住居にしている家庭も少なくなっている。
長方形平面の直屋(すごや)に対して、L字形平面の家屋をいう。
母屋と厩(馬屋)がL字形に一体化していることから、「曲り家」と呼ばれる。
こうした伝統的家屋は全国各地に分布しているが、
最も広く知られているのが「南部曲り家」である。
南部曲り家と他のL字形家屋との違いについては、
突出部に厩を持つ点で共通し、
かつ分布域が接触する「中門造」との対比で説明される。
中門口(突出部の先端に入口)をもたないことが、決定的な違いである。
屋根は本来茅葺で、母屋は寄棟、厩側は入母屋もしくは寄棟である。
母屋と厩の向きには、右厩タイプ(向かって右側が突出部)と左厩タイプがあり、
遠野盆地周辺では後者が多い。
内部間取りの特は、家畜飼養空間、作業・収納空間、居住空間の3つからなる。
遠野盆地周辺では、東側が台所で、南側に厩(うまや)が
母屋の下手に接続して突出し、台所の竃から排出された暖気が厩に流れ込み、
飼育されている馬を温める仕組みになっていることが多い。
特に、馬産地であった岩手郡、紫波郡、稗貫郡、上閉伊郡、下閉伊郡、
九戸郡に多く見られ、現在の盛岡市・紫波郡周辺と遠野市周辺が
曲家分布の核心(高密)地域であった
遠野市にある「千葉家住宅」と「旧菊池家住宅」は、
国の重要文化財に指定されている。
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