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 宇宙と地球と ホモサピエンス全史

第一部 宇宙の謎と神秘
第二部 地球創造物語
第三部 ホモサピエンス全史


第一部 宇宙の謎と神秘




目次
 
第一章宇宙の起源

   
ビッグバン宇宙論
     ビッグバン直後の世界
    誕生から3分までの世界
    粒子と反粒子
    宇宙創世紀
    宇宙創世紀
    膨張する宇宙
    ビッグバン宇宙論の証拠

   第二章 銀河と恒星の起源

   約38万年後の閃光
   宇宙の歴史
   
黒物質と暗黒エネルギ
    
ビッグバン宇宙論の問題点
     数億年後の宇宙
     宇宙の揺らぎと重力 
     重力と引力
     重力場
     重力波
     核融合反応
     恒星の誕生 
     恒星の一生 
     太陽よりも大きな恒星の運命 
     ブラックホール 
     化学結合の重要性
 
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   第一章 宇宙の起源



ビッグバン宇宙論

  
      宇宙の歴史(イメージ図) 画像提供:NASA / WMAP Science

 ビッグバン理論は、現在、最も広く受け入れられている宇宙論である。つまり現在の宇宙は、今か138億年前に起こった、大爆発つまりビッグバンによってこの宇宙が始まったという理論である。
 
 近年のハッブルの宇宙観測値を根拠にした推定により、ビッグバンは約138億年前に起きたと推定されるようになった。
 ビッグバン宇宙論は、第二次大戦後にガモフ(G・Gamow)が提唱した理論である。これに対立する理論として定常宇宙論がある。 ビッグバン宇宙論では、原初の全宇宙は、原子核一個ほどの極小で、極端な高温・高密度の空間に閉じ込められていたとしている。

    

 この時間も空間も存在しない、「無」の状態の「時空特異点」から、ビッグバンによって忽然と宇宙が誕生し、爆発的に膨張しつづけ、冷却されてできたのが現在の宇宙の姿であるとしている。ただしいわゆる大爆発ではなく、じつは瞬間的インフレーション、すなわち瞬間的膨張であったという説もある。

 この「時空特異点」は宇宙に突然現れたのではなく、むしろ、宇宙が時空特異点の内部で始まったと言われている。
 時空特異点以前には、宇宙、時間、物質やエネルギーなどは存在しないという。
 では「時空特異点」が、どうやって出現したのか。
 宇宙はなぜ作り出されたのか。
 物理学や天文学では、宇宙誕生以降の時間・空間の物語は詳しく説明できるが、なぜビッグバンが起きたか、宇宙誕生以前については、神学あるいは哲学の世界でしか解決できない領域である。ここではこの事については深入りしない。

 時間そのものが、ビッグバンの瞬間に空間や物質、エネギーと共に作られた可能性があるため、「以前」という考えそのものに意味がないのかもしれない。
 ビッグバンによる輻射熱(一点から周囲に射出されるエネルギー)の海で、素粒子が析出され、時間の経過とともに、徐々に温度が下がると素粒子が結合を始め、水素とヘリュウムの原子核が合成される。更に膨張が続き、それにつれて温度が下がり、やがて単純な素粒子から、複雑な物質が形成された。これがビッグバン宇宙論の立場である。      目次



ビッグバン直後の世界

  

 宇宙誕生後の1秒に満たない、極くわずかな瞬間以降については、ビッグバン宇宙論は、大量の証拠に基づいた詳細な説明をすることができる。
 宇宙誕生の壮大なドラマの初期を、大きく三つの時代に区分けする。
 第一段階は、爆発後100万分の1 秒(10 -6秒)後の時代、第二段階は、それから3分を経過するまでの時代、
第三段階は、それ以後のいろいろな元素が合成される時代である。
 爆発後、100万分の1秒を経たとき、宇宙の温度は約10兆度K(10 の13 乗)になっていた。Kとはケルビンのことで、絶対温度を意味している。
 この温度は、10億電子ボルト、つまり核子(陽子と中性子)の質量に相当する。太陽の中心でさえ1千500万度(K)であり、それを遙かにしのぐ高温であったのである。
 このときの宇宙の密度は、有限だが揺らいでおり、1インチあたり10の90乗トンくらいだったという計算がある。

  

 ただこのような、想像することさえ不可能な大きな数値には、適当な呼び名がない。
 
 宇宙が極めて小さかった爆発直後には、非常な超高温で、火のような輻射線の海で、この輻射の火の海から、素粒子と反素粒子を析出し、素粒子と反素粒子は互いに引き合って、対消滅をするためすぐに消え、絶え間なく現れたり消えたりを繰り返していた。
 この1秒に満たない時代は、超高温状態のため、物質とエネルギーは、互いに置き換わることかできた。
アインシュタインの相対性理論のように、物質とエネルギーは、その根底にある何かの現れ方が違うだけで、エネルギーは、相転移によって素粒子と反素粒子を析出し、これが衝突して対消滅することで、100パーセントが元のエネルギーに戻る。  つまり「物質とは、静止状態にあるエネルギーである」と考えられている。
      
 素粒子と反素粒子が対消滅しても、温度が充分高いと、すぐに粒子と反粒子が発生する。こうして発生と消滅を繰り返すことで、いわゆる熱平衡状態が実現される。 
 アインシュタインの特殊相対性理では、「質量とエネルギーの等価性」として導き出された公式「E = mc2」(エネルギー= 質量×光速の二乗)がある。これは、物質が持つエネルギーは、物質の質量に「光の速度の二乗」を掛けたものに等しいと言う事である。
 例えば質量1gすべてをエネルギーに変換すると、1g×(30 万㎞/秒)×(3万㎞/秒)のエネルギーになる。
このエネルギーは、広島に投下された原爆と同じになる。広島の爆発で放出されたエネルギーは、約63兆ジュール、TNT火薬換算で1万5千トン(15キロトン)に相当する。
      
 一瞬の間に、初期宇宙はものすごい速さで膨張した。天文学者が言う「インフレーション」期が終わったころには、宇宙は現在の宇宙の一つの銀河系ほどの大きさであった、と見られている。
この宇宙は、物質(素粒子)とエネルギーでできた、星雲のような状態であった。
 この星雲が膨張することで冷え、それにつれ様々な種類の力と物質に分化し始めたのである。この変化を科学者は相転移と呼んでいる。
 宇宙は急速に膨張し、誕生1秒後には、宇宙の密度は水の密度まで下がり、温度は10億度に下がった。この時、物質を構成する基本的な塊、電子、陽子、中性子、そしてそれらの反粒子とニュートリノと呼ばれる幽霊のような粒子が、熱い輻射の海から凝結した。 それはちょうど炉の中の金属の蒸気から、溶けた鋼の小滴が凝結するのに似ている。

  

 さて、ビッグバン直後の宇宙の温度は、現在の宇宙の平均温度、つまり絶対三度(三度K)に比べても、10兆倍近く高い超高温である。したがって宇宙の大きさは、現在の10兆分の1ほどであったと考えられている。
このようにビッグバン以前は、微少でしかも高温・高圧の、原子核ほどのボールの中に、多数の素粒子がひしめき合っていたのである。「絶対温度・零度」とは、熱が存在しない温度という意味で、摂氏マイナス273・15度℃のことである。
 そして太陽の影響を全く受けない、何も存在していない宇宙空間では「宇宙背景放射」により絶対零度より3度℃高い。これを三K(絶対三度)という。ちなみに摂氏零度は、 プラス 273・15 Kとなる。ついでながらケルビン(記号: K)は、熱力学温度(絶対温度)の単位である。         目次



誕生から3分までの世界

 第一段階から第二段階に入ると、宇宙は膨張しつづけ、温度はそれに続いて下がった。
 宇宙誕生後、約3分後に温度が1千万度に下がったとき、陽子2個と中性子2個が互いに結合しヘリュウム原子核になった。
  

 計算によれば、宇宙誕生の初めの3分間で、宇宙の水素の30%が、こうしてヘリュウムに変換されたという。
 温度が下がってくると、もはや核子(原子核の陽子と中性子)や、反核子を生成するだけのエネルギーが供給できなくなる。 こうなると、核子と反核子が衝突し、エネルギーに転換して急激に減少する。つまり核子と反核子は、プラスとマイナスの関係で、互いに引き合い衝突し対消滅して、エネルギーに転換する。

  

 狭い空間中に核子と反核子が閉じ込められると、対消滅の確率も大きくなる。こうして、温度が10億度K以下になると、核子と反核子、電子と陽電子の対消滅は終了する。
 もしそれまでに、厳密に等しい数の粒子と反粒子が存在していたならば、宇宙開(かい)闢(びやく)後、1秒も経過しない時間で、それらは完全に対消滅し、宇宙は物質ゼロの世界になっていたであろう。そして今日の宇宙は、消滅で発生した光子(こうし)、あるいは相互作用が弱いために消滅を免れた、ニュートリノと反ニュートリノで満たされていたはずである。

       
 ところが、今日、地球や太陽があり、あらゆる生命が存在している。それらは、膨大な数の重粒子と軽粒子を素材にしている。
 重粒子は核子数がゼロでない素粒子の総称で、陽子・中性子は電子の約2千倍の質量があるが、陽子と中性子と同程度、又はそれ以上の質量の粒子を重粒子、電子のように軽い粒子を軽粒子(レプトン)、中間の質量のものを中間子と呼ぶ。 

 現在の宇宙は、太陽系や地球、そして天の川銀河も物質で構成されており、物質はすべて膨大な数の重粒子(陽子・中性子)と軽粒子(電子)を素材にしている。
 本来、宇宙誕生のとき、重粒子と軽粒子は、同じ数の反重粒子と反軽粒子を生成されたはずである。しかし人類が知ることのできる宇宙は、物質だけで構成されている。
 では、対消滅を免れた反粒子はどこへ行ったのか。
実は反粒子は、すべて粒子との対消滅で消滅してしまってい る。では、なぜ粒子が生き残ることができたのか。
 この説明には、素粒子を構成するクォークまで立ち入らねばならない。
 クォークも反クォークが存在する。

  

ところがクォークと反クォークの対称性が、ごくわずかではあるが、破れていたと考えられている。つまりクォークの崩壊寿命が、反クォークの寿命よりほんのわずかに長かった。
このために、重粒子はこのクォークが結合して生じるが、反クォークから生じる反重粒子よりわずかに多くなる。
 そして、反重粒子よりわずかに多い量の重粒子が生き残ったのである。そしてこの重粒子が、様々に結合することで、新たな元素が生まれた。
 宇宙開(かい)闢(びやく)から数分たった時から、重水素やヘリュウムなど元素の合成が始まる。

  

 この段階では、反陽子や反中性子は消滅してしまっているので、反重水素や反ヘリュウムなど、いわゆる反元素は生じない。以後の段階では、巨視的な規模で反物質が出現することはないのである。
さらに、ほんのわずかの間に、相転移によってエネルギーの基本的な四形態(四つの力)が誕生する。
 つまり重力と電磁気力、それに「強い」核力と「弱い」核力である。重力と電磁気力については後述するが、大きな役割を果たすことになる。
「核力」とは、原子核内で、陽子と中性子を固く結びつけている原子核を構成する力のこと。陽子と中性子が接近したときに働き、中間子によって媒介される。

  

 これらの四つの力に加えて、物質の基本構成要素も誕生した。これには暗黒物質や、あらゆる物質を構成している原子物質も含まれる。そして宇宙開(かい)闢(びやく)から20 分のうちに、物質とエネルギーは、より安定した形になり始めた。
 水素原子のプラス電荷の原子核である陽子は、すでに誕生しており、そのおよそ25 %は融合した上に、中性子(質量は陽子とほぼ同じだが電荷'は持たない)と結合し、ヘリウム原子の原子核(陽子2個)を形成した。
少数の陽子は更に融合して、リチウムの原子核(陽子3個)を形成した。

  

 しかし、宇宙か急速に冷えたため、これ以上の融合は起こらなかった。この時点で物質はガス状で高温のプラズマの形で存在し、プラズマの中の原子内での陽子と電子(負電荷を持つ)結合はまだ起こっていない。
 似たような状態(プラズマ)は現在も恒星の中心に存在している。陽子と電子は電荷を帯びているため、宇宙にある原子物質の大半は電気的に衝突し、強烈な電磁エネルギーに常にもまれていたと見られる。           目次



粒子と反粒子
                           
   
 時空特異点以前には、宇宙、時間、物質やエネルギーなどは存在しなかった。超高温、超高圧の微少な宇宙が、ビッグバンによってエネルギーが爆発・膨張したとき、その超高温度のエネルギーから、粒子が析出され膨張する宇宙に拡散した。
 ただ生成された粒子と同数の、反粒子も生成され、同様に宇宙に拡散したと考えられている。これを対(つい)生成と呼ぶ。
                          粒子とは、あらゆる物質を構成している微細な物質のことで、質量を持ち素粒子・原子・分子などの総称で、物質の構成単位である。あるいは量子力学的な意味では、光子や陽電子がある。 素粒子物理学の課題の一つは、最も基本的な粒子を発見することである。

   

 例えば、原子は、電子・陽子・中性子という、よりさな粒子によって作られている。さらに、陽子と中性子は、クォークという、より基本的な粒子によって作られていることが、現代の素粒子物理学によって広く知られている。

 さて、反粒子とは、ある粒子(又は複合粒子)と比べ、質量とスピンが等しく、電荷など正負の属性が逆の粒子を言う。
 特に陽電子や反陽子などの反レプトン(レプトンは電磁相互作用と弱い相互作用をする素粒子)や反バリオン(バリオンは、3つのクォークから構成される亜原子粒子)をさす場合もある。

   
                          
 反粒子が粒子と衝突すると、対消滅を起こし、「すべての質量」がエネルギーに変換される。逆に、粒子と反粒子対の質量よりも大きなエネルギーが、粒子同士の衝突や光子などの相互作用で与えられると、ある確率で粒子・反粒子対を生成する。これを対生成と呼ぶ。

 電子の反粒子は陽電子であり、同様に陽子には反陽子、中性子には反中性子がある。中性子は中性だが、反中性子は構成粒子であるクォークが、反粒子であるため反粒子が存在する。光子では反粒子と粒子が同じで区別がない。

   

 ビッグバンのエネルギーで、様々な粒子が生成され、やがてそれらが結合して水素やヘリュウムといった物質が作られた。と、同時に反物質も同時に作られた。
 反物質は、質量とスピンが全く同じで、構成する素粒子の電荷などが、全く「逆の性質」を持つ反粒子によって組成される物質のこと。例えば、電子はマイナスの電荷を持つが、反電子(陽電子)はプラスの電荷を持つ。中性子と反中性子は電荷を持たないが、中性子はクォーク、反中性子は反クォークから構成されている。

 さて、この反物質と物質とが衝突すると、「対消滅」を起こし、質量がエネルギーとなって放出される。

  

 これは反応前の物質・反物質そのものが完全に無くなってしまい、消滅したそれらの質量を、そっくりエネルギーに変えてしまうのである。
 対消滅によって、物質からエネルギーに転換される効率は、原理的には100%であり、原子力や核融合などのいかなるエネルギー源でも、これ以上の効率をだすことはできない。
 これを定式化したのが、のちに何度か出てくる、アインシュタインの特殊相対性理論である。
つまり質量が対消滅してエネルギーに転換されると同時に、エネルギーが転嫁されて物質が生成されるのである。
 対消滅のエネルギーは、例えばわずか1gの質量で、約90
兆ジュール のエネルギーに転換する。
このエネルギーは、広島に投下された原爆のエネルギーが55 兆ジュールであり、その1・6倍にも相当する。

  

 つまり物質1gの消滅エネルギーは、核融合のエネルギーの数百倍を上回るのである。核分裂を起こしたウラウンの質量は、核分裂より1000分の1の質量がエネルギーとして放出されるだけである。
 ただし対消滅では、発生するニュートリノが、一部のエネルギーを持ち去るため、反物質の対消滅で発生するエネルギーのうち、光子などの比較的検出しやすい粒子に与えられるエネルギーは、これより少なくなると言われる。
 まだ3分に満たない小さな宇宙では、狭い宇宙に粒子と反粒子が存在した。 これらは電荷がプラスとマイナスであるため、互いに引合って対消滅を繰り返し、一方で宇宙の温度が一定まで下がるまでは、粒子と反粒子また生成されたのである。
 ただ現在宇宙には、ほとんど反物質は存在していない。従来、物質と反物質は、鏡のように性質が逆なだけで、その寿命を全く同じだと考えられてきた。だが近年、粒子群の中で、「物質と反物質の寿命が、ほんの少しだけ違う」ということが分かってきた。

  

 最初はK中間子と反K中間子で見つかり、そして、B中間子もはっきりと反B中間子とでは寿命が違うことが確認された。日本の高エネルギー加速器研究機構のBelle検出器による発見である。反物質の寿命がわずかに短かった」、つまり対称性の破れがあったため、混沌とした初期宇宙の一瞬に起きた「物質と反物質の対生成と対消滅」で、ほんのわずかな可能性だが反物質だけが消滅し、物質だけが取り残される場合があった。
 無限に近い回数の生成・消滅の果てに、「やがて宇宙は物質だけで構成されるようになった」と解釈されている。このように対消滅の繰り返しで、宇宙は38万年間、超高温のプラズマ状態であった。             目次



宇宙創世紀
 
 1913年、アメリカの天文学者ヴェスト・スライファーが、銀河が地球から非常なスピードで遠ざかっているのを偶然に発見した。遠ざかる銀河のスピードは、速いものでは時速320万㎞にまで及んでいた。
 この発見は、宇宙が膨張していることを示す、最初の観測であったが、その事についてはスライファー自身も気がついていなかった。
 翌年、スライファーはアメリカ天文学会に発表した。その時に使用したスライドには、遠くの銀河から来る光の色の変化が
「赤方偏移」を明確に示していた。聴衆は、それが何を意味するのか、よく理解していた訳ではないが、この重大な発表に、全員立ち上がって拍手したという。

  

 この発表会の群衆の一人に、エドウィン・ハッブルがいた。その後ハッブルは、スライファーの手かがりを取りあげ、新しい宇宙論を作り上げることになる。
 一方、1917年、アインシュタインが、一般相対性理論の方程式を発表した。するとすぐに、オランダの天文学者ヴィレム・ジッターは、その方程式の解として、爆発する宇宙を予言するような解を発見した。

   

 この第一次世界大戦の時代では、お互いの情報が伝わっていなかった。またアインシュタイン自身も、自身の理論が、宇宙の膨張を予言しているとは気がついていなかった。
 またアインシュタインが、計算途中で一ヵ処の誤りを犯していた。ロシアの数学者アレクサンダー・フリードマンがこの誤りに気づき、この計算をただすと、見落とされていた解が飛び出したのである。しかしアインシュタインは、当初その誤りを認めなかった。

 そして1923年になって、アインシュタインは、二重の誤りを認め、フリードマンに謝罪した。
アインシュタイン自身が、一般相対性理論を発表したとき、まさか宇宙が膨張しているという解がでてくるとは予想しておらず、困惑したらしい。

   

 アインシュタインが、膨張する宇宙を認めるのに躊躇したのは、宇宙が膨張していれば、当然、時間と宇宙の始めがある事になる。これは神学上、暗に何かを意味することがある故に、アインシュタインを悩ましたのであろう。

 1921年、アインシュタインがニューヨークを訪れたとき、あるユダヤ教の教師 (ラビ)が、アインシュタインに電報を打った。「あなたは神の存在を信じますか?」
 アインシュタインは電報で答えた。「私はスピノザのいう神を信じます。その神は、存在するものの秩序ある調和の中にその姿を顕します。

      
             汎神論は万物に神が宿るという思想
 スピノザは、オランダの哲学者であり、デカルト、ライプニッツと並ぶ17世紀の近世合理主義哲学者として知られ、その哲学体系は、代表的な「汎神論」と考えられてきた。
  汎神論とは、言うまでもなく、あらゆるものに神が宿り、一切万有は神であり、神と世界とは、本質的に同一であるとする宗教観・哲学観である。     目次



膨張する宇宙

 スライファーが、遠くの銀河が地球から非常なスピードで遠ざかっているのを偶然に発見した。が、この説明について、太陽系が所属している銀河は、銀河自体が一緒に移動していると信じていたから、他の遠くの銀河が外見上動いて見えるのは、単に我が銀河が動いているかに過ぎないと信じていた。

   

 そしてスライファーは、銀河の研究を止め、他に転じた。
 その銀河の研究を引き継いだのが、ハッブルである。
 ハッブルがウィルソン山天文台職員となった1919年に、ちょうど100インチ (2・5m) フッカー望遠鏡が完成している。これは当時世界最大の望遠鏡であった。
 1923年~24年にかけて、ハッブルは、ハミルトン・ヒューメイソンを協力者として、このフッカー望遠鏡で観測した。
その観測の結果、それまで小さな望遠鏡での観測から、我々の銀河系内の天体ではないかと考えられていた星雲と呼ばれる、ぼんやりした天体の中に、我々の銀河系の外にある、銀河そのものが含まれていることが確認された。

  

  ヒューメイソンは、1億光年以上の距離まで、宇宙の奥行きを綿密に調べた。この途方もない広い領域の銀河は、どれもが高速で地球から遠ざかりつつあった。これによりスライファーの発見を立証した。銀河の遠ざかる速度は、中には時速1 億マイル(1億6千㎞)というほど録べき速度で後退しているものもあった。
 ヒューメイソンが銀河の速さを観測する一方で、ハッブルは、それらの銀河までの距離を巣観測した。

  

 この距離の測定について、彼は ケフェウス型変光星と呼ばれるある型の星を物差しにして、銀河までの距離を測りつづけた。ケフェウス型の星というのは、我々の銀河の中にある同タイプの星の研究で、その真の明るさが分かっていた。
 つまりケフェウス型変光星は、その変光周期と明るさの絶対等級との間に、一定の関係がある。
 従って変更周期を調べれば、真の明るさが分かる。
それと見かけの明るさを比較することで、遠くの銀河のケフェウス型の星の光の明るさから、その銀河までの距離が判断できたのである。
 変光星が使えないほど遠方の銀河については、 球状星団(10 万から100万個の恒星が、直径100光年ほどの大きさに密集している星団などを使って距離を決めた。これらは銀河系では百数十個見つかっている。

  
         
球状星団
 このようにしてハッブルは、近くにある1ダースほどの銀河の距離を測った。

 大多数は百万光年以上、最も遠いものは7百万光年もあった。これは1光年が約6兆マイル=約9兆4千600億㎞である。
しかもその銀河は、太陽系の属する銀河の大きさ、10万光年よりはるかに大きかったのである。

 このハッブル測定値と、ヒューメイソンの観測結果を照合して、距離に対する速さの値をグラフに落とし込んだ。その結果 が、ハッブルの法則として発表された。

   

 「遠くにある銀河ほど、後退する速度が速い」というものである。こうしてオランダの天文学者ヴィレム・ジッターが、一般相対性理論の方程式の解として、膨張する宇宙を予言していた事とハッブルの観測結果が一致したのである。
 つまり遠くの星雲の光が赤方偏移している事実は、この宇宙が膨張していることを明らかにしている。
しかし宇宙に始まりがあるという事実に、1930年までアインシュタインは抵抗した。ようやく地球を半周してハッブルを訪れて、ハッブルの撮影した赤方偏移した銀河の写真を確認して、宇宙が膨張していることを納得したと宣言した。    目次



ビッグバン宇宙論の証拠

 ハッブルたちの遠方の銀河とクエーサー(準恒星) の観測から、これらの遠くの天体が赤方偏移していることが分かっている。これは、これらの天体から出た光が、より長い波長へとずれていることを意味する。これは、これらの天体から出た光が、より長い波長へとずれていることを意味する。
  
      1
30億年以上前の銀河が7つ
 この赤方偏移は、これらの天体のスペクトルをとって、それらの天体に含まれる原子が、光と相互作用して生じる、輝(き)線(せん)(輝いた線だけから成るスペクトル)や吸収線の分光パターンを、実験室で測定したスペクトルと比較することで分かる。
このように遠方の銀河が、ハッブルの法則に従って遠ざかっているという観測事実を、「一般相対性理論」を適用して解釈すれば、宇宙が膨張しているという結論が得られる。
 ちなみに太陽系のある天ノ川銀河は、秒速220㎞、時速8万㎞という、とてつもない速さで宇宙空間を移動している。他の遠くの銀河で速いものは、約時速320万㎞ まで及ぶ。

  
      宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の全天マップ
 さて、ビッグバン宇宙論を支える観測上の証拠は三つである。
1)遠方の銀河ほど、大きい速度で遠ざかる。
2)宇宙を構成している元素のうちヘリウムの量が、宇宙初期の高温・ 高密度がないと説明できないくらい多い。
3)宇宙背景輻射が存在している。この三つである。

  
 
 宇宙膨張を過去へと遡れば、宇宙の誕生以前には、全ての物質とエネルギーが一ヵ処に集まる高温度・密度状態にあったことになる。この初期状態、又はこの状態からの爆発的膨張をビッグバンという。
 この高温・高密度の状態より更に以前については、一般相対性理論によれば「重力的特異点」になるが、物理学者たちの間で、この時点の宇宙に何が起きたかについては、広く合意されているモデルはない。
 1990年にハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられ、その後の継続的な観測によってより精密な観測が行われてきた。
 一方、「ハッブルの法則」とは、天体が我々から遠ざかる速さと、その距離が正比例することを表す法則で、1929年、エドウィン・ハッブルとミルトン・ヒューメイソンによって発表された。この発見は、宇宙は膨張しているとする説を裏付ける証拠となった。

  
    
銀河の距離と後退速度は比例している

 同じ時間の間に、2倍の速さの銀河は2倍遠くに到達でき、 3倍なら3倍遠くへ到達することができる。 だからすべての銀河は、同時に1点から広がり始めたはずであるという。
 広がり始めから現在までの時間は、 地球からある銀河までの距離を、後退速度で割り算すれば得られる。 その結果は138億年であり、これが宇宙の年齢であり、宇宙の大きさでもある。
 
 天文学者は、ハッブル宇宙望遠鏡で、天の川の向こうにある19個の銀河の中に存在するケフェウス変光星という特定の種類の星を測定した。ケフェウス変光星は、エドウィン・ハッブルに膨張する宇宙に関する最初のヒントを与えた星である。
 そして、最も遠方にある星は、推定速度で後退しているのではなく、加速していることに気がついている。

  

つまりアインシュタインの法則の「光速度より早いものはない」という法則と矛盾している。
しかし 宇宙を加速膨張させている、暗黒エネルギーのふるまいや、暗黒物質の未知の性質によって、説明できる可能性があるともいう。それはまるで謎めいた力によって駆り立てられているかのようで、すぐに「反重力」という名称が与えられた。 目次




 第二章 銀河と恒星の起源



約38万年後の閃光

 第三段階に入る。ビッグバンからおよそ20分ほども経過すると、宇宙が広大な空間に膨張して急速に冷える時、原子同士の融合は止まった。
 この時点で、物質はガス状で高温のプラズマの形(自由に運動する正・負の荷電粒子が共存し、電気的に中性になっている状態)で存在した。プラズマの中の原子内での、陽子と電子(負電荷を持つ)結合はまだ起こっていない。

  
 
 似たようなプラズマ状態は、現在も恒星の中心に存在している。 陽子と電子は電荷を帯びているため、宇宙にある原子物質の大半は電気的引き合って衝突し、強烈な電磁エネルギーに常にもまれていたと見られる。
 電磁エネルギーが凝縮した素粒子と考えられる光子(静止質量0、スピン1の粒子)は、これらの荷電粒子ともつれていたと推測されている。
 このプラズマ状態はおよそ38万年間存在していた。
これは人間が地球上に誕生してからの年数のほぼ倍の長さである。
 そしてビッグバンから約38万年後に、重要な相転移が新に:起こる。宇宙が現在の太陽の表面温度ほどにまで冷えるにつれて、光子がエネルギーを失い始めるとともに、原子より小さな粒子の動きも落ち着いてくる。

  

  そしてついには、冷えて落ち着いた宇宙で、プラス電荷の陽子とマイナス電荷の電子が結合できるくらいに、電磁気力の効果か現れ始めた。
ここにきて、臨界温度(陽子と電子が結合できる上限温度)より低温になったことで、宇宙の至るところにある陽子と電子が結合し、電気的に中性な原子が形成された。陽子と電子のプラスとマイナス電荷が互いを相殺したため、宇宙全体がまるで急に電荷を失った状態になった。
 こうして電磁的な放射の中でもつれ合っていた、プラスとマイナスの電荷の網が消え、ついに光の光子が、宇宙を自由に動けるようになったのである。

  

  輻射線の一形態である光は、電荷を帯びた電子や陽子を通り抜けることはできない。
 ところが、宇宙にある電子と陽子が、他の核と結びついて原子を形成すると、電気的には中性となり、光線は妨げる物がなくなり、遙か遠くまで進むことが出来るようになった。
 宇宙誕生から38万年後、プラズマ状態から太陽の表面温度の6千度まで温度が下がったことにより、様々な原子が誕生し、同時に光子が解き放たれた。

 その瞬間、ものすごい閃光が輝いたのではないか。
と、40 年代後半にガモフが提唱した。さらに、この閃光を見つけることは、まだ可能かもしれないと表明した。

  
       
宇宙背景放射のイメージ図

しかし、この大昔のエネルギーの閃光の名残を、真剣に探した者が、当時は一人もいなかった。
 ところが1964年、ベル電話会社の研究員二人が、衛星通信用の超高感度の受信機を作成中に、背景雑音として排除できない、規則正しく繰り返されるエネルギーの雑音を発見した。それはアンテナをどの方角に向けても存在していた。
 これを知ったプリンストン大学の物理学教授ロバート・ディッケによって、ビッグバンのおよそ38万年後、光子が解き放たれた瞬間に放たれた閃光、つまりその宇宙背景放射ということが確認されたのである。これは、宇宙背景放射と赤方偏位変、ビッグバン宇宙論を支持する最も強力な証拠と言える。   目次



宇宙の歴史

 2014年に約136億歳の恒星が報告されたが、宇宙にはこれより古い天体は存在しないらしい。これは宇宙年齢が138億歳とするビッグバン論と矛盾しない。
 恒星が幼年期から老年期へと発展して、最終的に崩壊する過程については、今や天文学者の常識とされている。これは、温度や化学組成や質量などを測定することで、恒星の年齢を推定できるということである。
 いずれの計算によっても、136億歳以上という恒星の存在は示されていない。
定常宇宙論が推測するように、宇宙が無限に年を重ねているのであれば、例えば数千億歳などの年齢を重ねた恒星が、存在しないのは矛盾していることになる。
 一方でビッグバン宇宙論が正しければ、この年齢構成はちょうど予想したとおりのものといえる。

  

 二つは、ビッグバン宇宙論では、大爆発という起源があるから、当然、宇宙には歴史がある。このために、長い間に宇宙は変化すると示している点である。例えば1万年前の人間社会と、現代社会とでは大きく異なっているのと同じである。
 天文学者も百億年前の宇宙は、現在のものとは大きく異なっていることを観測で知っている。

 最も強力な望遠鏡では、地球から数十億光年離れた天体を見つけることができる。ついでながら光年は、光が1年間に進む距離のことで、およそ9兆4千607億㎞のことである。この観測を行った場合、実際には数十億年前の天体を見ていることになる。これは、天体が出す光が、地球に届くまで、数十億年かかっているからである。

  

 つまり、最も強力な望遠境は、時間旅行者のようなもので、最も強力なものになると、ビッグバンから間もないころの宇宙を見ることができるのである。
 初期宇宙が、現在の宇宙とは実に異なっていることを、こうした望遠鏡は見せてくれる。初期宇宙はより密集していて、現在の宇宙では極めて珍しい、クエーサー(準星・恒星状天体)などの天体が含まれていたのである。
 クエーサーは「準恒星状電波源」という意味で、全銀河の中心にあるとされる。

  

 数十億光年以上も遠くにあるにもかかわらず、明るく輝く天体で、強い電波を発する天体として発見されたが、X線・光・赤外線などでも観測される。
銀河の中心に、太陽質量の数億から数十億倍の巨大ブラックホールがあり、周辺のガスが落下していく過程で、強いエネルギーが放出されるために恒星状に見えると考えられている。
つまり、巨大なブラックホールに、恒星が吸い込まれると形成される。
 このような研究は、宇宙には長い間に変化する歴史があるというビッグバン宇宙論の結論を支持している。ほとんど変化しないという、定常宇宙論の結論とは相入れない。
 三つは、宇宙が最初の数秒間で急激に冷やされたため、あらゆる化学元素の中で最も単純なものしか形成される時間がなかったという点である。

      
 この最も単純な元素というのが、水素である。水素は、中心に陽子が1個あるだけで、周回する電子も1個の元素である。
次ぎにヘリウムである。ヘリュウムは、陽子2個と電子2個の元素である。

     

 現在発見されているどの化学元素も、核に固有の数の陽子を持っており、これはウランまで続く。
ウラニウムは、陽子92個と電子92個の元素である。つまり、水素やヘリウムよりも大きな元素が形成されるには、より多くの陽子を持つ、より大きな核を形成するために、原子核が融合する必要がある。
 ところが陽子はすべてプラス電荷であるから、陽子同士の電気的反発力に打ち勝つには、非常な超高温が必要となる。ところが、最初の原子ができるころには、もう宇宙はそれほど高温ではなくなっている。
  
    

 このことが意味するのは、宇宙の大部分は水素とヘリウムから成り立っているということになる。この予測自体が意外だったのは、どちらも地球の表面にはめったに存在しないからである。
 ところが、天文学者による分光写真機による観測で、宇宙にある原子物質の約75%が水素、残りの大半はヘリウムからなっていると突き止めた。またしても、ビッグバン宇宙論による奇妙な予測は正しいと判明したのである。    目次



暗黒物質と暗黒エネルギー

 ビッグバンから数十万年後の宇宙は、ほとんどの原子物質は、主に水素とヘリウムからなる巨大な雲という形で存在していた。その雲も更に大きな「暗黒物質」の雲の中に埋もれ、暗黒物質の雲の引力によって凝縮されていた。
 このように初期宇宙には暗黒物質の雲が充満し、その引力の中に原始物質が閉じ込められていた。
 このことから、まずは暗黒物質について語らねばならない。

 ところが、この暗黒物質は、今日でもきちんと理解されていない、宇宙の不思議な物質である。

  

 それでいて、宇宙を支配するほどの質量と他の恒星などへ大きな影響を与えている。
 現在の宇宙の銀河系には、太陽と同じような恒星が2千億個ほどあるといわれている。さらに、宇宙全体では、銀河系が、何と1千億個以上もあるとされている。
 ところで、宇宙の物質でも、ほとんどが地球にある物質と同じようなものだと考えられてきた。この大前提が、NASAの宇宙探査機の観測で覆されたのである。
 宇宙にある物質のうち、既知の物質はたったの4%だけで、その他の96%は未知の物質によって占められていることが判明した。科学者たちはこの未知の物質を「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」と名づけた。

  

 現在の天文学の観測では、天の川銀河は渦を巻き、ものすごいスピードで回転し、更に秒速240㎞、時速8万㎞という速度で宇宙空間を移動している。
 これだけ高速回転していると、銀河にある星々は遠心力で飛び散ってしまうはずである。
 ところが、天の川銀河が維持されているのは、高速回転による遠心力に見合う重力が内側から引っぱり、星々を銀河の渦の中に引き留めているからだという。この重力の釣り合いの質量を計算すると、光学的に観測できる物質の10 倍もの質量が必要となる。

  

 この要因こそが、正体不明の「暗黒物質」が銀河の中にあり、巨大な重力を働かせて、星々を引き留めているというのである。
 暗黒物質とは、「質量は持つが、電磁相互作用をしないため、光学的に直接観測できず、かつ色荷も持たない」とされる。
 銀河系内に「遍(あまね)く存在する」、「物質とはほとんど相互作用しない」とされており、間接的にその存在を示唆する観測事実は増えているが、構成素粒子などまだ不明な部分も多い。
 暗黒物質は「物質」という名前がついているが、これまで知られている物質粒子とはまったくの別種の粒子からできていると考えられている。

  

 暗黒物質粒子についてわかっているのは、ある程度の質量を持つこと、宇宙全体で見ると、その総量は星やガスなどの普通物質の総量の5倍に達すること、普通の物質粒子とは、ほんのごく僅かに相互作用するとみられている。

 ところで既知の物質は、宇宙全体の約5%しかなく、「暗黒物質」は27%にしかならないという。そこで、残りの約68%を占めるのは「暗黒エネルギー」と呼ばれている。
 この謎の暗黒エネルギーが、宇宙の膨張を加速させているのではと推測されている。これまで、ビッグバンによる宇宙の膨張のスピードは、宇宙全体の重力によってブレーキがかかり、遅くなっていくと考えられていた。
 
  

 ところが1998年に、超新星爆発を観測していた研究チームが、「宇宙が加速的に膨張している」証拠を発見したのである。その加速膨張させている力の源が、「暗黒エネルギー」だという仮説を唱えている。
 暗黒エネルギーは、宇宙全体に広がって負の圧力を持ち、実質的に「反発する重力」としての効果を及ぼしていると考えられている仮想エネルギーである。     目次



ビッグバン宇宙論の問題点

 現在ほとんどの天文学者や宇宙論者は、ビッグバン宇宙論が宇宙の起源について、かなり正確な根拠をもたらしていると認めている。それでも、完全には程遠い。

  

 最も目を引く問題のひとつは、すでに触れた暗黒物質と暗黒エネルギーの存在である。この両者は、様々な観測から存在が予測されているが、まだ理解には至っていない。
 見えているもの以上に、かなりの見えないダークな物質が存在しているはずだと最初に気づいたのは、銀河の恒星の動きを 研究していた天文学者だった。 

  
  
    重力場と暗黒エネルギー場のイメージ図

 重力の法則を用いると、恒星が巨大な銀河を周回する速度を推定することが可能である。
 だが、恒星の実際の動きが示したのは、天文学者が実際に検出できたものより20倍もの質量があるはず、ということだった。その質量の一部を構成しているのが、暗黒物質であると推測されている。更に90年代後半になると、宇宙の膨張速度が加速していることが明らかになった。
この膨張加速は、暗黒エネルギーとして知られる新たなエネルギー形態によるものだと、ほとんどの宇宙論者が推測している。このエネルギーは反重力のような働きをして、相手を引き寄せるのではなく引き離すのである。
 

 暗黒エネルギーは、宇宙の質量のおよそ70%を構成している。つまり物質とエネルギーは互いに等価で置き換わりうるのである。暗黒工ネルギーは、宇宙の空間量と結びついているため、宇宙が膨張するとともに、その重要性が増すエネルギー形態である。
 事実、ビッグバンから約90億年後、ちょうど地球が形成されたころに、暗黒エネルギーの力が増した結果、宇宙の膨張速度は加速し始めたようなのである。

 

 一方、暗黒物質は、宇宙の質量の25%を占めていて、残りの4~5%は原子物質からなる。ほとんどの原子物質は、水素とヘリウムの形をしており、炭素からウランまでのより重い化学元素は、原子物質の約1~2%しかない。
 つまり宇宙全体の質量の4~5%の、更に約1~2%なので、全体としては0・04~0・1%にしかならない。
だが、原子物質でさえ、そのほとんどは目に見えないため、恒星や星雲など実際に検出できるのは、宇宙に存在する物質の1%未満にすぎない。
 つまり宇宙全体の質量の0・05%未満である。

     

 宇宙にある物質やエネルギーの大半を、実際には理解できていないという事実は、多くの天文学者にとって大きな悩みの種である。
 暗黒物質の候補として、ヒッグス粒子がある。
 ヒッグス粒子とは、ピーター・ヒッグス博士が64年に存在を提唱した素粒子のこと。
 宇宙誕生のビッグバンから百億分の1秒後、光速で飛び回る他の素粒子にまとわりつき、動きを抑制することで、質量を生んだと考えられている。

  
       
ヒッグス粒子の想像図

 標準理論で存在が予想された17種類の素粒子の中で唯一未発見だった 素粒子の質量は、理論上この粒子との相互作用から生じるとされるが、未発見)冷たい暗黒物質であるニュートリノ(ベータ崩壊の際にエネルギー保存則に基づいて存在を仮定され、その後存在を確認された中性の素粒子。
 スピンは1/2、質量はほとんど0だが未確定。中性微子)が挙げられている。
 暗黒物質と暗黒エネルギーの本質が解明されないかぎり、ビッグバン宇宙論にはまだ疑問符が付きまとうのである。
 それでも、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)のような実験が、何らかの答えを間もなくもたらしてくれると、天文学者も宇宙論者も期待している。
 LHCはヒッグス粒子と思われるものを発見した。LHCが更に高いエネルギー準位で運転し始めれば、暗黒エネルギーや暗黒物質の、実際の組成を解明する手掛かりとなるような、別のエネルギーや物質の形態が見つかるのではと、期待を寄せている。
 このような問題があるにもかかわらず、宇宙はどのように始まったのか。この根本的な問いかけに対して、現時点で手に入るこの上なく強力かつ説得力のある答えが、ビッグバン宇宙論である。
   目次



数億年後の宇宙
 
 まだ銀河も恒星も惑星も生成されていない時代で、宇宙背景放射によるかすかな輝きをのぞいて、宇宙は暗かったはずである。そして宇宙は、どの場所も全く同じようで、違いも多様性もほとんどなかった。
もし宇宙にあるすべての原子が、他のどの原子とも等距離にあったとしたら、その結果は、全てが他のあらゆる原子に対し、同じ引力を働かせるという、一種の行き詰まり状態となったのは明らかである。
 宇宙誕生初期のドラマで、もっとも重要な役割を果たすのが重力である。
 質量の大きい場所で重力は強く、物質間の距離が離れると重力は弱くなる。これが意味するのは、関係する物体の質量と、物体間の距離により、重力の効果が場所によって変わるということである。

  
      
初期の宇宙のイメージ

 初期の宇宙は、暗黒物質の雲の中に閉じ込められた、巨大な雲という形で存在していた。やがて数億年が経過するころから、水素とヘリウムから成る巨大な雲の密度に、わずかな違いがあり、引力によって、原子がより密集した場所が徐々に形成された。その雲を構成する原子の密度が、更に大きくなるほど、より大きな引力によって、周囲の原子や原子の集まった雲までも引きつけ、その結果、物質の塊を作成し始める。
 物質がやや多い場所ができると、重力の引っ張る力が強く作用するようになり、更に多くの物質をそこに引っ張りこむ。
 暗黒物質と原子物質による巨大な雲が凝縮すると、やがて熱を帯び始める。より多くのエネルギーを、小さな宇宙空間に詰め込むと、温度が上昇する。

   

 したがって、密度が増した場所では、温度が上昇し始める。これは初期宇宙の新たな現象で、それまでの宇宙は、冷える一方だったからである。
 こうしたわずかな密度の違いと温度のむらが生まれた。初期宇宙の至るところで、暗黒物質の巨大な雲がゆっくりと凝縮していったと想像できる。
 その中に埋め込まれていたのは、凝縮しながら熱を帯びていく原子物質の複数の小さな雲である。
 熱はこれらの雲の中にある原子に、エネルギーを与えるため、原子は活発に動く速度を上げ、頻繁かつ激しくぶつかり合うようになる。

  
     
プラズマ状態で電離された水素

 最後には、余りに猛烈な高温になったために、ついに電子と陽子が再び引き離された。こうして結合が解かれ、自由になった陽子と電子で満ちた、初期宇宙のプラズマ状態を再度作り上げた。プラズマ状態で電離された、水素が光を放っている天体をHⅡ領域という。

 直径数百光年に達する大きさを持ち、内部で星形成が行われている。このガス雲の中で生まれた若い高温の青い星が、多量の紫外線を放出し、星の周囲にある星雲を電離することで光っている。

  
    
ガス雲の中で生まれた若い高温の青い星

 2012年、ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外線観測から、130億年以上前の宇宙に、存在する銀河が7つ見つかった。
これらの銀河は138 億年前の宇宙誕生から3億5千万~6億年後のものとみられる。
その1つは、わずか3億8千万年後という、これまでに発見された銀河の内もっとも遠くのものかもしれない。
 こうした初期宇宙における銀河を、まとまった数で観測できたのは初めてのことで、宇宙の歴史を遡るにつれて、銀河の数が減るという推測に沿う結果となっている。

   

 こうして数億年後の初期の宇宙には、最初の銀河である、巨大な光の雲が生まれ、それぞれの銀河は無数の光の点からなっていた。更に銀河が徐々に集まって、宇宙誕生から数億年後にその放射で「再電離」が起こった。

再電離とは、宇宙誕生後初めて作られた中性水素原子が、銀河などからの紫外線で再び電子と陽子に分けられ(電離し)、宇宙の暗黒時代が終わりを告げたという、宇宙の歴史における一大イベントである。初期の銀河に含まれる恒星の放射が、この電離を起こすに充分なものだったかどうかは、これまで議論の的になってきた。
 今回の研究からは、再電離は数億年以上も続き、銀河はゆっくり星や物質を生み出していったと考えられる。
一瞬の劇的なイベントではなく、長期間の緩やかなプロセスだったと考えられている。     目次



宇宙の揺らぎと重力

 天文学者が、初期宇宙で生成された原子が、均一でなかったという前提で宇宙創成のドラマを描いた。
 その初期宇宙が「均一出なかった」という、その証拠が、宇宙背景放射によってもたらされた。つまり初期宇宙では、密度と温度にむらのあることを示す、観測データーが得られたのである。天文学者が60年代に初めて調べたときは、宇宙の均一さに驚かされた。

 ところが、その後の綿密な調査により、実際にはわずかな温度差があることがわかってきた。
92年、アメリカの天文学者ジョージ・スムードは、宇宙背景放射の研究用に特別に設計された人工衛星を用いてこの差異を調べた。

  
        
宇宙背景放射の観測
 
 その結果、彼が見つけた差異は、恒星が集まって銀河を形成する仕組みを解明するに十分なものだったのである。
観測の結果作られた初期宇宙の図は、まさに「宇宙が誕生した瞬間」だと天文学者は感嘆の声を上げたという。
 このように最初の恒星が誕生するのは、重力という引力によっている。重力とは、あらゆる物質同士の間で働く引力なのである。
 20世紀初頭、アインシュタインは、重力がエネルギーにも影響を及ぼしていると発表した。アインシュタインは物質とエネルギーは、その根底にある「何か」の異なる形態だと証明している。極度の高温では、物質はエネルギーに変化し、逆もまた同様である。

  

 したがって、重力が質量だけでなく、エネルギーにも影響を及ぼすことは、驚くには当たらない。このことは1919年に、イギリスの天文学者アーサー・エディントンによって立証されている。
彼は、太陽の重力が、光線を曲げるかどうかを調べ、アインシュタイン理論を検証できると考えた。
 太陽の重力が恒星からの光線を曲げるなら、太陽が恒星の前にきて恒星を隠してしまった瞬間の直後でも、まだ恒星の姿を見ることができるはずだと考えた。
つまり、太陽の重力によって、光線がわずかに曲がるはずだからである。しかし、太陽は明るすぎるため、通常であれば太陽の近くにある恒星は見ることができない。

  

 ところが、皆既日食の際には、これを行うことができる。エディントンは1919年のその機会まで待った。
 そして彼がアフリカのプリンシペ島から日食を観察したところ、アインシュタインが予測したとおり、太陽の端に近づくにつれて、恒星は一瞬浮き、すぐに消えたことが観測できた。
このホバリング効果は、恒星からの光が曲げられたせいで、恒星が太陽の後ろに隠れたあとでも、一瞬見えたままになる事によって確認されたのである。     目次



重力と引力

 宇宙に重力があったが故に、恒星が誕生し、やがてそれらが集まって銀河を作った。
 さらには重力によって、光が曲げられる事実から、太陽より遙かに遠い銀河の光を観察できるのである。このように、宇宙の現象を理解するには、重力と万有引力を理解する必要がある。

  

 ここで少しだけ重力と万有引力について触れたい。
 重力とは、地球上で物体が地面に落下する現象や、人が物を持った時に感じる、いわゆる「重さ」を作り出す原因のこと。
 万有引力は、重さ(質量)のある2つのものの間に働く引っ張りあう力で、質量さえ有れば、どんな物にでも働く。重力という表現は、宇宙論などでは、「万有引力」と同一として扱われ、重力に関する言葉は、英語の gravity の頭文字を取ってG と略されることがある。
 このため物理学では、慣習的に、天体の表面重力を小文字の g、万有引力定数を大文字の G を用いて表している。
 
   
 
 さて、地球上の重力は、地球上の物体に対して働く「地球の万有引力」と、地球自転による「遠心力」との合力を指している。
 つまり本来の質量による「引力の強さ」が、地球の自転による「遠心力」によって減じる、その弱められた力を重力という。
 言い換えると、遠心力より強い力が、地上の重力といえる。このため、赤道では遠心力が大きいが、北極点や南極点では(ほぼ)ゼロである。
 この故に、厳密に言えば、赤道上では万有引力が、大きい遠心力で弱められ、重力が小さくなる。一方、北極点や南極点での有引力は(遠心力がほぼゼロなので、)弱められず、赤道よりも重力が大きくなっている。ただ一般論としては、地球上で、質量が1㎏の物体に作用する重力の強さは、約 9・8N でほぼ一定である。

  

 相対性理論では、「重力は質量に比例する力」であり、その比例定数は加速度の次元を持っている。
 これが重力加速度(物体を自由落下させたとき、重力によって生じる加速度)である。重力以外の力がないときは(真空のとき)、あらゆる物体は、質量その他の属性にかかわらず、重力により重力加速度に等しい加速度を受ける。

  
                          
 これが落体の法則である。重力加速度の大きさは、単位「ガル (Gal)」を用いて表す。間の各点における重力加速度は、「重力場」を構成する。
 一般相対性理論では、「重力場」は、時空の歪みそのものである。     目次



重力場

 重力場とは、重力が作用する空間のこと。
 真空の空間を飛び越えて重力が働くという、「引力の作用」を記述するための関数として、ポテンシャルという量が導入され、のちにこれが重力場の概念に発展した。

  
      
    重力場の概念図
 
 重力ポテンシャルとは、重力の源である物体が、他の位置にある物体に及ぼす力を、あらかじめ位置の関数として指定しておく量である。
 質量Mの球体の重力ポテンシャルは、その中心からの距離に反比例し、Mとニュートン重力定数に比例する。例えば、1つの重力質量を持つ物体から離れた場所の、重力場の大きさは、物体の重力質量に比例し、物体からの距離の2乗に反比例し、その比例定数は万有引力定数 (6.673×10-11N・m2/kg2) である。
 
  
        
地球の重力場の概念図

 このようにニュートン重力理論の重力場は、力を記述する補助手段にすぎないが、一般相対性理論の重力場は、電場、磁場と同じく、エネルギーを伴った物理実体である。そして重力場のエネルギー伝播が、重力波である。
 また重力場は、時間・空間の計量と関係し、曲率をもった時空構造をつくりだす。
 力の統一理論(統一場理論)の観点からみると、重力場は時空の対称性に由来するゲージ場であると、見なすことができる。
 重力場は、宇宙空間では、最も重要な力の場である。惑星の運動、星の構造、銀河内の星の分布と運動、宇宙の大局的な構造が主に重力場により支配される。

  

 また一般相対性理論では、重力場の存在は、「時空の構造を変化させ」、四次元時空はリーマン空間と呼ばれる曲った空間になる。つまり重力とは、時空の歪みであると考える。 
 平坦な時空の中で、重力によって曲がるのではなく、歪んだ時空の中を進んでいると考える。
 ゆがんだ時空中では、物体の軌跡や光線が曲がる。これは質量やエネルギーや運動量のつくる重力によって、軌跡や光線が曲げられたとみなされ、時空のゆがみが重力場と解釈できる。
 ただし、一般相対性理論の基本原理の「等価原理」によると、加速する物体の運動と、重力場の中での物体の運動は(局所的には)区別できない。つまり、万有引力の源となる質量や、エネルギーや運動量のない時空においても、座標変換によって、重力場を作ることができることになる。



重力波

  

 重力波とは、時空(重力場)の曲率の時間変動が、波動として光速で伝播する現象のことである。16年に、一般相対性理論に基づいて、アルベルト・アインシュタインによってその存在が予言された。その後、約百年もの間、幾度となく検出が試みられ、2016年に直接検出に成功したことが発表された。
 重力波は、巨大質量をもつ天体が、光速に近い速度で運動するときに強く発生する。

  
     
天体衝突時の重力場の概念図

 例えば、ブラックホール、中性子星、白色矮星などのコンパクトで大きな質量を持つ天体が、連星系を形成すると、重力波によってエネルギーを放出することで、最終的に合体すると考えられている。
 重力波の概念は、アルベルト・アインシュタイン自身が、一般相対性理論を発表した2年後に発表した。重力波の存在は間接的には示されていた。
 なお、素粒子物理学の標準理論では、重力相互作用を伝達する素粒子として、重力子が想定されているが、これは2016年現在未検出である。
 重力波の検出は、現在の一般相対性理論研究の大きな柱の1つであり、巨大なレーザー干渉計や、共振型観測装置が、世界の数拠点で稼働あるいは計画中である。
 また、予想される重力波は非常に弱いため、ノイズに埋もれた観測データから重力波を抽出するために、重力波の波形をあらかじめ理論的に計算して、予測する研究も精力的に進められている

  
  
LIGOが初めて観測した13億年前の重力波 2つのブラックホールが合体した時の重力波

 重力波は、物体が加速度運動をすることで放出される。
 ただし、完全な球対称な運動(星の崩壊など)や、円筒対称な運動(円盤状物体の回転など)からは放出されない。
一般相対性理論が、日常生活で意識されることが、ほとんど無いように、この理論から予言される重力波の振幅は非常に小さい。 人工的に作り出して、観測することは不可能であるので、波源は宇宙の天体現象に期待される。     目次



核融合反応

 約1千万度℃で臨界値を越えると、陽子同士が激しく衝突して融合するようになる。陽子はプラス電荷であるため、通常は互いに反発する。
 ところか衝突が激しい場合は、反発力に打ち勝ち、2個の陽子が互いに充分に近づくや、原子内のわずかな距離でのみ作用する、強い「核力」によって結合する。
その結果、固く結びついた陽子2個と中性子2個からなる、新しいヘリウム原子核ができる。陽子同士がぶつかり合って、ヘリウム原子核を形成する。この過程を、核融合反応と呼ぶ。陽子同士が融合すると、陽子のわずかな質量が、膨大なエネルギーに変換される。

  

 へリウム原子核の4個の粒子―つまり2個の陽子と2個の中性子は、結合していない4個の陽子よりも質量がやや小さいことから、このことがわかる。これが水素爆弾の中心で起こる、核融合反応のエネルギーのことである。
 アインシュタインによる有名な方程式「E=mc2」は、このような過程で放出されるエネルギー量(E)は、エネルギーに変換される質量(m)に、光の速度(C)の二乗をかけたものに等しいという意味である。
 光は1秒間に約30㎞進むため、これはとてつもない数字になる。だからこそ、水素爆弾は、あれほど強力な、爆発エネルギーで周囲を破壊するのである。

  
        
 原子物質雲

 1952年に、太平洋のエニウェトク環礁で行われた、初の水素爆弾の実験での破壊力は、1945 年8月9日に長崎に投下された原子爆弾より、およそ500倍、同年8月6日に広鳥に投下された原爆のおよそ700倍も強力な破壊力である。
 核融合によって新たなヘリウム原子核が形成されるたびに、凝縮する原子物質の雲の中心では、大量の熱が発生する。
 それぞれの雲の中心にある、この高熱の炉からの熱放射により、さらなる凝縮は止まって、原子物質雲の大きさが安定する。
 この過程が、初期宇宙で凝縮する巨大な原子物質雲の至るところで繰り返されるうちに、無数の個々の恒星が生成され、最初の銀河が誕生して宇宙が明るくなっていった。  目次



恒星の誕生

 巨大分子雲は、主に水素分子からなる非常に低温(10-20K)で、密度の高い雲である。長期間にわたって、安定した状態で存在できるが、超新星の衝撃波や分子雲同士の衝突や、磁場の相互作用が引き金となって、分子雲の一部が収縮を始める。このような収縮が起こると、雲の衝突や分裂の過程で恒星が誕生する。

  
   赤外線天文衛星スピッツァーが撮影  星々が生まれる領域
 
 巨大分子雲の中で星々が生まれると、それらのうち最も質量が大きいものは周囲のガスを電離させるほど高温になる。
このようなガスを電離する、輻射場ができるとすぐに、エネルギーの高い光子が電離ガスの境界面を作り出す。
 この境界面は星を取り巻くガスを超音速で吹き払う。新たに電離されたガスによって電離領域の体積は膨張するが、星からの距離が遠くなるにつれて、電離境界面の速度は次第に遅くなる。そしてついには、電離面の速度は亜音速にまで遅くなり、星雲の膨張による衝撃波に追い越される。
 こうしてHⅡ領域が誕生する。

  
    
銀河星雲  いて座にあるくHⅡ領域

 HⅡ領域の寿命は数百万年のオーダーである。
高温の若い星からの輻射圧はやがてガスのほとんどを吹き払ってしまう。実際、HⅡ領域の星形成過程は非常に効率が低く、星を形作るのに使われるガスは、HⅡ全体の10%以下であり、残りは星ができる前に吹き飛ばされてしまう。
 HⅡ領域からガスが失われる要因としては、内部で生まれた大質量星の超新星爆発も寄与している。
 これらの重い星は生まれてから100~200万年後には爆発してしまう。HⅡ領域は数百万年にわたって、数千個の新しい恒星を生み出す。

  

 生み出された星団の中で、最も質量の大きな星々が超新星爆発を起こしたり、激しい恒星風を放出したりすると、HⅡ領域のガスは吹き払われ、星団の背後にわずかな星雲を残すのみとなる。生成された恒星は、基本的には大量の水素と、ある量のヘリウムを蓄えている。中心は非常に高温のため、水素原子核(陽子)が中心核に落下すると、核融合してヘリウム原子核を形成する。
それぞれの恒星の中心にある、この高温の炉で生じた熱と光が、恒星の中をあちこち、ぶつかりながら、ゆっくりと移動したのち、最後は何もない空間へと出て行く。
核融合反応を続けられる水素があるかぎり、それぞれの恒星は、熱と光を発生し続けることができるのである。

  
    
乙女座銀河団にある 星生成領域
 
 銀河系の太陽も、およそ45億年前に同じように形成されたものであり、今後50億~60億年は存在し続けるだろうと、言われているから、現在はその生涯の中間地点、つまり人の青年期ぐらいである。
 こうしたことから、恒星が新たに形成されて、無数の小さな光がついた銀河か誕生すると、暗かった宇宙か明るくなっていくことか想像できる。
 若い恒星が集まった星生成領域、あるいは星の形成場では、冷たい宇宙空間ヘエネルギーが注ぎ込まれる。 銀河とは、無数の恒星の間にある重力の連鎖によって、形成された天体で、比較的安定しており、宇宙とほぼ同じくらい長く存在しているものが多い。
 一方で、それぞれの恒星には、核融合が起こる高温の中心核があり、その周囲を外層が覆うことで凝縮圧が中心核の熱を維持し、更に水素を供給するという、独自の構造がある。 恒星は比較的安定していて、寿命はほんの数百年のものから、数十億年のものまである。

   

 あらゆる複雑なものと同じように、恒星は、中心核で核融合してエネルギーを解放しつつ、そのエネルギーの流れによって、恒星を持続的に安定させるような新たな特性'をもっている。
 銀河内には、特異な領域がある。「超新星」爆発が頻繁に起こる銀河中心に近すぎることもなく、エネルギーが乏しい周縁部でもなく、ちょうどその間の領域である。
 同様にエネルギーが過剰で、どんな複雑なものも形成され、同時に破壊されるような恒星の内部では、とても複雑なものが形成されそうにはない。より複雑なものが形成されそうなのは、恒星の中心でもなければ、エネルギーが乏しい空間でもなく、恒星の周囲領域である。そして、恒星に近いこの場所で、宇宙の新たな物語がつくられる。

 
    
ラニケア 超銀河団 右端に天の川銀河

 ビッグバンからおよそ2億年が過ぎると、こうして無数の物質の雲が凝縮して無数の新たな恒星が生成され、無数の新たな銀河にまとまってくる。
 重力によって銀河は大集団の銀河団にまとまり、更に大きな超銀河団を経て、宇宙で最大の組織化された構造、すなわち、クモの巣のような、巨大な構造の銀河フィラメント、あるいはグレートウォールが形成される。
巨大な構造の銀河フィラメント
 これよりも規模が大きくなると、重力の影響力は減り、膨張力が幅をきかせるようになるため、こうした構造を目にすることはなくなる。これほどの大規模になると、宇宙のそれぞれの部分は互いに離れていく。     目次



恒星の一生

 この宇宙は、水素ガスを多く含んだ薄い雲で満たされており、宇宙の前物質の90%は水素ガスである。そして少しのヘリュウムガスが存在している。
 重複するが、恒星が形成されるのは、水素やヘリウムガスが、雲のような星間物質の密度にムラが生じて、より密度の高い部分が、周囲の水素やヘリウムガスを引力で引き寄せて結合して星間物質の塊ができ、これが繰り返されて恒星となる。

  
 
 やがて、外周部の物質が、密度の高い中心部の引力で中心部へ落ち込み、更に中心部の密度を高める結果、だんだん収縮していく。
 中心部へ強い引力で引き込まれると、素粒子や原子同士の衝突によって高熱を発する。小さなものでも1千万年かけて、ガスの球体の中心温度が約決定的な1千万度に達すると、原子核反応が始まる。ここまでの期間を星の「収縮期」といい、太陽程度の質量の星では、約5千万年かかる。

  
     
恒星の中心核の凝縮崩壊の過程

 恒星の中心核で一度、核融合が始まると、中心の熱によって凝縮は止まる。恒星自体を凝縮崩壊させる傾向にある重力と、凝縮崩壊を食い止める中心熱の間で、バランスが得られるからだ。この時点で、恒星は主系列に長期間とどまることになり、通常は何十億年も存在する。

 縮小期が終わるこの時期の恒星の内部は、3百万度K(絶対温度)以上の超高温であり、この超高温度で水素原子が核融合を始め、ヘリウム原子を合成する。こうして生まれるヘリウム原子は、陽子2個と中性子2個で構成された原子核で、まわりを2個の電子が回る希ガス原子である。

  

 核融合では、4個の水素原子核が、1個のヘリウム原子核と2個の陽電子とエネルギーとニュートリノが発生する。
このように核融合反応が行われると、原子量が0・029少なくなり、減少した原子がそっくりエネルギーに代わることで、大きなエネルギーが発生する。
 このとき発生するエネルギー量は、アインシュタインの法則 E =mc² で計算される。つまり原子の質量×光の速度(30万㎞/秒 )の二乗となる。
 この核融合反応で、甚大な熱と光のエネルギーを放出される。太陽と同じ恒星が光り輝いているのは、この核融合反応が連続しているからである。
 このような恒星内元素合成によって、水素がだんだん減っていき、ヘリウムが増えていく。この時代は星の一生の中でもっとも長く、太陽程度の質量の星で百億年ほどは続く。
 恒星の中心部にヘリウムが増えると、やがてヘリウムの核ができ、それを包む球殻上で水素の原子核反応が進むようになる。 ヘリウム核が更に重くなっていくと、表面温度も上昇して星の外層が膨張して、やがて赤色巨星という非常に大きな赤い星になる。

  

 赤色巨星とは、水素が核融合で使い果たされ、核融合は止まる。核融合反応で生成されたヘリウム・炭素・珪素・鉄などの、重い元素がたまった中心部が収縮崩壊を起こすと、凝縮によって発生する高熱によって、また外層の温度は、水素の融合を起こすほど超高温になる。
 その結果、恒星は膨張して赤色巨星となる。外層部は更に膨張を始め、物質が徐々に外へ流れ出し大きく広がり、惑星状星雲を形成し、表面が低温の巨大な赤い星となる。
  そして、赤色巨星の状態から、外層のガスを放出して収縮していき、高密度の残骸ともいうべき白色矮星という小さな星になり、星の最期の姿を見せる。
 代表的な白色矮星は、地球とほぼ同じ数千㎞の半径をもち、質量は太陽に匹敵し、地球の数十万倍もある。
 その密度は、1立方㎝あたり、600㎏である。惑星の寿命は、ごく短命の小さな恒星でも、数百万年もの間、水素を燃料として核融合反応をつづける。
 
  

 白色矮星では、やがて中心に中性子の塊ができ、このとき大量のニュートリノが生成される。それが収縮圧で支えられるようになると、外層から落下してきた物質は、中性子の塊の表面で跳ね返され、この莫大なニュートリノ放射による圧力で、超新星爆発が起こる。 通常ニュートリノは、物質と非常に相互作用しにくい。しかし落下して来た物質の密度が極度に高く、ニュートリノの数が莫大であると、高確率で衝突し超新星爆発を起こす。

 さて、我が太陽も、今から40億~50億年の後には、赤色巨星になると予測されている。

  

 このときからは膨張し、水星、金星・地球という地球型惑星を飲み込んでしまい、全滅させると予想されている。非常に大きな恒星では、中心の凝縮崩壊によってかなり高温となるため、ヘリウムが核融合を始めて炭素が生成される。
 宇宙に豊富にある炭素は、生命そのものの進化には欠かせない。ところが、ヘリウムが水素よりも高い温度で、しかもかなり速く燃焼するため、水素よりもヘリウムの方をかなり速く使い果たすことになる。そうなると、中心核が再び凝縮崩壊を始める。このあとはどうなるのか? 

 

 最期の崩壊は、破局的な爆発現象で、その星も吹き飛ばして崩壊する。太陽がこの時点に達すると、外層が剥がれて、近くの空間に炭素をまき散らすことになる。続いて全体が収縮して自色矮星になり、ほかの白色矮星と同様に、最終的には冷えて黒色矮星になると、その後は何も起こらない。
 宇宙は、水素がある間は、死と再生という永遠の無限循環を続ける。     目次



太陽よりも大きな恒星の運命

 一方で、太陽よりも大きな恒星は、更に幾つかの展開が待ち受けている。
 ヘリウムがなくなると中心核が崩れるが、質量はまだ充分にあるため、凝縮崩壊によって炭素も核融合するほどの超高温となり、連続した激しい核融合で酸素やケイ素といった別の元素を生成する。これは何度も繰り返し行われる。
 新しい燃料が使い果たされるたびに、中心核はまた凝縮崩壊し、温度がまた高くなると、「星の一生]を終えつつある恒星は、また燃料を燃焼し始めるのである。
様々な層で、様々な燃料が使われ、この過程はますます活発になる。
 最終的には、中心核が約40億度に達すると、大量の鉄(原子番号26)の生成か始まる。

     

 太陽より25倍も質量が大きい恒星は、数百万年かけて中心核にある水素を使い果たすと、50万年をかけてヘリウムを燃焼し続ける。そして中心核が収縮を続け、温度が上昇を続ける中、炭素を600年、酸素を半年、ケイ素を1日かけて、燃焼する。
 核融合によって新たな元素を作り出すこの過程は、鉄で終わりとなる。
 だが、中性子捕獲として知られる第二の方法により、「星の一生」を終えつつある大質量恒星では、より重い元素を大量に生成することができる。
 この方法では、原子核が迷走中性子を捕獲すると、中性子はベータ壊変して陽子になる。
陽子が増えることで、より重い元素が生成される。この方法では着実に、ビスマス(83)と同程度に重い原子核か形成される。
 大質量星の中心が、鉄で満たされると杉融合は収まり、恒星は超新星として知られる最期の大爆発で崩壊する。

 
     
超新星として最期の大爆発で崩壊

 つかの間、この恒星は、銀河全体と同じくらい明るく輝き、質量の大半は宇宙空問へ吹き飛ばされるが、恒星の中心核は凝縮崩壊すると、極めて高密暖の塊となって、中性子星か、若しくはブラックホールを形成する。
 中性子星とは、原子核と同じくらいの密度がある物質形態である。
 高密度であるため、小さな山程度の塊でも、地球全体に匹敵する重さかあり、全体は1秒間に何度も回転して、天文学者がパルサーと呼ぶ、規則的に閃光を放つ天体になる可能性もある。
 元々の恒星が充分に大きければ、凝縮崩壊してブラックホールを形成する。
 ブラックホールは超高密度であるために、その引力からは、光でさえも、逃れられないという空間の領域である。

 
      
はくちょう座のブラックホール

 近接する恒星から物質を引き寄せている。ブラックホールに落込む物質はブラックホールの周囲に円盤を形成し、この円盤が放射する強力なX線が今から50年以上前に初めて観測された
 超新星爆発では、更にあることが起こる。
 ほんの数秒のうちに周期表の残りの全元素鉄(26)からウラン(92)までが、中性子捕獲によって生成され(超新星元素合成)、宇宙へと吹き飛ばされる。
 このような爆発の結果は、「カニ青雲」に見ることかできる。

 

 このように、この世界を形作る物質の基本構成要素である周期表の各元素は、主に三つのステージで生成されたのである。
 宇宙の大部分を構成している水素(約75%)とヘリュウム(約23%)は、ビッグ・バンで生成された。いわゆるビッグバン元素合成である。これが最初のステージである。

 第二の.ステージは、恒星の内部で起こる(恒星内元素合成)。ここでは核融合によって大量の水素がヘリウムとなり、より大きな恒星では、一部のヘリゥムは炭素や酸素やケイ素、さらには鉄(原子番号26)など、その他の元素になる。
赤色巨星では中性子捕獲によって、ビスマスまでの更に重い元素が生成される。

   

 このように恒星が消滅する際に、生成された新たな元素は、周りの宇宙へまき散らされる。

第三のステージは超新星で起こる。
 これは非常に大きな星の一生の、最期の数秒間と同時に起こる大爆発である。 超新星の高熱下では、実に多くの中性子が生み出されるので、周期表の残りの全元素は、中性子捕獲によってほんの数秒のうちに作られる(超新星元素合成)。
その後、これらの新しい元素は宇宙へまき散らされるのである。現在も、水素とヘリウムは、全原子の質量の約98%を構成している(原子数では99%以上)。

 
    
超新星爆発による  超新星元素合成

 残りの2%のうち、最も多いのが鉄までの元素で、「星の一生」を終えつつある恒星の内部で、核融合によって生成されたもの。これには、酸素、炭素、窒素、鉄、ケイ素が含まれ、いずれも地球上の化学作用や、地球の生命過程に重要な役別を果たしている。残りの元素はどれも、「星の一生」を終えつつある恒星もしくは、超新星での中性子捕獲によって生成されたもので、存在する量はごくわずかである。     目次



ブラックホール

 ブラックホールは、極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体である。名称は、アメリカの物理学者ジョン・ホイラーが1967年に命名した。それ以前は、崩壊した星を意味するコラプサーなどと呼ばれていた。
 ブラックホールは、その特性上、直接的な観測を行うことが出来ないため、他の天体との相互作用を介して間接的な観測が 行われている。X線源の精密な観測と、質量推定によって、いくつかの天体はブラックホールであると考えられている。

 

 周囲は非常に強い重力で、時空が著しく歪められ、ある半径より内側では、脱出速度が光速を超えてしまう。この半径をシュヴァルツシルト半径、この半径を持つ球面を、事象の地平面と呼ぶ。この中からは、光であっても外に出てくることはできない。
 ブラックホールは、単に元の星の構成物質が、シュヴァルツシルト半径よりも小さく圧縮されてしまった状態の天体であり、事象の地平面の位置に、「何かがある訳ではなく」、ブラックホールに向かって落下する物体は、事象の地平面を超えて中へ落ちて行く。

  

 ブラックホールから離れた位置の観測者から見ると、物体が事象の地平面に近づくにつれて、相対論的効果によって、物体の時間の進み方が遅れるように見える。
 このため、観測者からは、ブラックホールに落ちていく物体は、最終的に事象の地平面の位置で永久に停止するように見える。
同時に、物体から出た光は、重力による赤方偏移を受けるため、物体は落ちていくにつれて次第に赤くなり、やがて可視光領域を外れ見えなくなる。

   

 また、ブラックホールには、密度、重力が無限大である「重力の特異点」があるとされる。角運動量(回転運動の大きさを表す量)を持たないシュヴァルツシルト・ブラックホールでは、重力の特異点」は中心にあり、回転するカー・ブラックホールでは、リング状に「重力の特異点」存在する。
 ブラックホールの理論的可能性は、18世紀後半に先駆的な着想があった。

 

 ピエール・ラプラスは、光の粒子説とニュートン力学から、光も万有引力の影響を受けると考え、理論を極限まで推し進めて「充分に質量と密度の大きな天体からは、その重力は光の速度でも抜け出せない」と推測した。
 現代的なブラックホール理論は、一般相対性理論が発表された直後に、アインシュタイン方程式を、カール・シュヴァルツシルトが特殊解として導いたことから始まった。
 シュヴァルツシルト解は、時空が球対称で自転せず、更に真空であるという最も単純な仮定で、一般相対性理論の厳密解を導くことで得られた。
 アインシュタイン本人は、一般相対論で特異点が有り得ることを認めていたものの、それは飽くまで数学的なもので、現実には有り得ないと考えていた。ところが1965年にペンローズが、星の崩壊は特異点に収束することを証明した。

 
       

 物質とエネルギーが充分に集まっている所なら、どこでも時空に終わりが来ることがあると証明したのである。
 物理学者ジョン・ホイラーは、この事実をより劇的に表現する方法を探し続け、1967年にニューヨークで開かれた会議で「ブラックホール」(黒い穴)と命名した。
ホイラーは「患者は、医師が病気に名前をつけないと、信じない」と説明したといわれる。

 1960年代の終盤から、イギリスの理論物理学者らは、特異点、時空の構造、物質の末路に関する定理を数多く生み出していった。例えば、当時の有名な定理は、「崩壊する物質もしくは、ブラックホールに落ち込むものは何であれ、特異点にぶつかって、存在が潰滅してしまうか、ブラックホールが回転しているとすれば、中心のワームホールに命中して、別の時空や宇宙にホワイトホールとして噴出する」と結論を下している。

 

 ホイラーは、ブラックホールは、飲み込む対象が何にで(青色巨星・星間塵・ニュートリノ・放射・反物質)あれ、それに関する情報を破壊してしまう。そこから出てくるものは、すべて同じものになる。という撹乱能力を備えていることを示し、「ブラックホールには、毛がない(ノーヘア)」と表現し、(ブラックホール脱毛定理)、カーターも別な定理としてノーヘアを提唱した。

 ブラックホールの存在は、理論的な存在に過ぎなかったが、70年代に入りX線天文学が発展したことで転機を迎える。宇宙の激しい現象からはX線が放出されるが、X線は地球の大気に吸収されてしまうことから、人工衛星で観測する必要があった。
 アメリカの大学グループが打ち上げたX線観測衛星「ウフル」は、4年間、数々の天体を継続的に観測し、X線の発生源が中性子星や超新星の残骸、パルサーであることを突き止めた。

 
   
はくちょう座Xー1の正体はブラックホール(右)

 そして数々の天体の中でも、白鳥座X-1のX線データは不規則で激しく変化し、どのデータにも当てはまらず科学者の注目を集めた。
 その後の精密な観測と分析の結果、太陽の30倍の質量を持つX-1が、自己重力によって潰れた星を周っている事が判明した。X線が極めて早く変化している事象により、見えない天体の大きさは、大変小さいと推測されるものの、「質量」は太陽より遥かに大きいことが分かった。
 この事実を受け、観測の責任者のリカルド・ジャコーニは、
一般相対性理論に基づき、その天体は「ブラックホールである」と述べている。

 
        
大マゼラン雲

 このX線は、晩年を迎えたX-1の膨張で、星の表面が引力圏に達して吸い込まれ、ガスの温度が1千万℃以上にもなる、降着円盤が発するX線波形だと結論づけられた。
 その後の観測で、四つの天体がブラックホール候補に挙げられたが、中でも地球から最も近い銀河で、16万光年の距離にある、大マゼラン雲内の二つの天体は、いずれも太陽の10倍程の質量に対し、直径は50㎞と極端に小さく、X線を放出していることが確認された。
 他の銀河系にも同様の天体が複数発見されている。 

 

 カイパー空中天文台が実施した、銀河中心核の観測では、太陽質量の300万倍にもなるガスが、中心部分に向けて3方向から秒速200㎞の
カイパー空中天文台が実施した銀河中心核の観測
速さで流れ込み、膨大なガスの一部は溢れ出て、宇宙に放出されていることが判明した。
観測の中心人物であるチャールズ・タウンズは、銀河系中心がブラックホールである可能性は極めて高いと語っている。
また、数多くの銀河の中心部に、太陽質量の数百万倍から数十億倍という、大質量のブラックホールが存在することが確認されている。

 
   
巨大なブラックホールからの粒子の放出を観測

 ケンブリッジ大学の天文学者のRoberto Maiolino氏は、巨大なブラックホールからの粒子の放出「アウトフロー」の中で、幼い星が形成されている様子を初めて観測した。
 ブラックホールは、一般に周囲の天体を飲み込んで破壊する活動が有名だが、一方では超高速な粒子の放出、「アウトフロー」も行っていることが分かった。そしてこのアウトフローが、宇宙空間の物質形成の役割も担っている。
 2011年、国立天文台とJAXAは、世界で初めてブラックホールの位置を特定することに成功した。
これは地球から約5440万光年彼方(かなた)にある、おとめ座A(M87)銀河に潜む、超巨大ブラックホールの位置を、電波観測により観測したのである。

 
     
 おとめ座A(M87)銀河

 更にJAXAが国際宇宙ステーションの全天X線監視装置(MAXI)を使って、地球から39億光年離れた銀河の中心にある巨大ブラックホールに、星が吸い込まれる瞬間を、世界で初めて観測したと発表した。    目次



化学結合の重要性

 ビッグバンの2億年~3億年後に、最初の大きな恒星が一生を終え、あるいは超新星として爆発したと見られる。

 

 それ以降、星間に雲状で標う新たな元素の数は徐々に増えた。最初は水素やヘリウムだけであったが、現在では、宇宙にある原子物資の質量のおよそ2%を構成している。
 その原始物質によって、宇宙の多様性は増えたが、これは各元素が、異なる数の陽子と電子を持っているからである。
 その結果、それぞれの元素が、微妙に異なる化学的振る舞いを示すのである。宇宙の大部分では、新たな元素は均一に分布するように見えるが、局所的には「重い元素」が大量に出現して、かなり重要な役割を果たしている。

   

  若い太陽が、初期の地球の軌道上から、多くの水素とヘリウムを吹き飛ばしたため、地球の地殻は酸素やケイ素といった「重い元素」で占められ、鉄や炭素、アルミニウムや窒素などがそれに続いている。
だからこそ、地球の化学組成は、宇宙の平均的な組成とは大きく異なっているのである。

 原子は、多くの様々な方法で結合して、全く新しい形態の物質を作ることかできる。たとえば、水素原子2個と酸素原子1個が結合すると、常温常圧で(無色の気体)全く異なるもの、つまり水ができる。そして、水こそが、生命に必須な条件である。
 原子は様々な方法で結合し、分子を形成する。分子は原子が数個のものから、数百万個、さらには数十億個の原子からなるものもある。

  

 原子間の化学結合は、どれも各原子の周りを回る、一番外側の電子(最外殻電子)の動きによる。水(H2O)の分子を作る共有結合では、2個以上の原子が最外殻竃子を共有する。この電子は、複数の原子核のプラス電荷に引き寄せられ、この電磁気的結合が原子同士をつなぎ止める。
 塩(塩化ナトリウム、Nacl)を形成するイオン結合では、電子は一方の原子から別の原子へと移動する。
これにより、一方の原子にはマイナス電荷が、別の原子にはプラス電荷がもたらされ、この電荷が原子と原子をつなぎ止めるのである。 

  
       
金属結合分子

 ほとんどの金属をつなぎ止めている金属結合では、最外殻電子は、原子核からの束縛を逃れて「自由電子」となり、個々の原子の間を漂っている。各原子は、電子を失ったために、わずかなプラス電荷があり、それゆえに、周囲を流れる電子の海へと引き寄せられるのである。
 化学結合とは、原子が結介して、岩石からダイヤモンドやDNA、そして、人間に至るまでの、新たな物質が形成されるのである。だからこそ、恒星内部での元素生成が、宇宙の物語で最も重要なのである。

  

  化学結合で、全く新たな性質を持った、様々な新元素ができた現在では、遠くの恒星の周囲にある物質の雲(分子雲)を調べ、水のような単純な物質から、生命の基本構成要素の一部も含めた、数多くの様々な分子も特定することかできる。 
 ただ、宇宙の環境は過酷であり、非常に寒く、エネルギーは限られている。そのため、宇宙で見つかる分子で百個以上の原子を持つものはほとんどない。
 地球の表面積は、さまざまな化学反応が起こり得る場であったが、その理由は、地球の表面には、全く新しい物質を作り出せる多くの元素があったからである。
 そこは、化学におけるゴルデイロックス環境(生命の存在と維持に適した条件を有する環境のこと)だったのである。
 
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